令和元年7月31日開催
 - 成功事例に学ぶ - 令和元年度京都産学公連携セミナー
~学の知恵を活かしてイノベーションを創造する~

1.日 時

令和元年7月31日(水)  12:45~17:10

2.場 所

京都リサーチパーク(KRP) 1号館4F サイエンスホール

3.対 象

(1)企業(特に、中小企業)の経営者や開発担当者、個人事業主、自治体関係者
(2)大学や専門学校、公的研究機関関係者(研究者)
(3)支援機関関係者(産学連携コーディネーター)   など

4.参加者数

(1)募集人数:100名
(2)事前申込み:120名(講師7名、事務局6名を含む)
(3)当日参加者:102名(講師7名、事務局6名を含む)

5.主 催

京都産学公連携機構 (一般社団法人 京都知恵産業創造の森)

6.協 力

京都リサーチパーク(株)

7.内 容

新事業や新商品の開発、革新的なイノベーション創出、さらに、技術やサービスの高付加価値化や事業領域の拡大(業容拡大)による企業価値や企業ブランドの向上には、産学公連携は有効な手段の一つである。これまでの国や自治体の様々な産業政策や助成制度により、大企業を中心に産学公連携やオープンイノベーションの意識が高まり、成功事例も報告されている。しかしながら、対象を中小企業、特に京都の中小企業に目を向けると、まだまだ産学公連携に対するハードルが高く、取組んでいる中小企業は少ない。また、近年、大学の社会貢献として、理工学部を中心とした「産学連携」と並んで、地域が抱える課題解決や地域経済の活性化策としての「地域連携(PBL事業)」が注目されている。

そこで、新事業・新商品開発やイノベーション創出に向け、成功のポイントやヒントを紐解くことにより、京都の強み、資源である「大学の知恵(研究成果やアイデア)」の活用の契機となることを目指し、「京都産学公連携セミナー」を開催した。

今回のセミナーでは、理工系だけでなく、デザイン・芸術系や社文系大学が多く立地している京都の特徴を活かした大学の社会連携(産学連携や地域連携(PBL事業:Project Based Learning)など)活動の実態を紹介するとともに、京都の伝統技術(友禅染め)や工芸(竹工芸)に焦点をあて、大学の知恵の活用(産学連携)にによる伝統技術や工芸の新展開、およびリブランディングの取組み事例について、「産(企業)」と「学(大学)」の立場から、連携に至ったきっかけやメリット、相手に望んだこと、苦労した点やトラブル、成功のポイント、産学連携の課題やアドバイス等を紹介した。
さらに、産学連携の開発成果としての友禅印

刷技術を使用した紙製品や竹の機能を活かしたアロマディフューザー「Take Reed」の展示も行った。

また、これまで常識と考えられてきた知識や方法論、価値観があてはまらない、従来の事業モデルや知識、成功体験が通用しにくい不確実性の時代に対峙し、新たな価値創造や市場創造、顧客創造により、従来のライフスタイルを変えるような商品やサービスを創出する新しい考え方として、近年注目されている「デザイン思考(Design thinking)」の考え方を紹介した。

【大学の社会連携紹介】

【1】京都大学における産学連携の取り組み

【概 要】 オープンイノベーションの流れの中で、企業の経営戦略・技術戦略上だけでなく産業政策上や大学の活動においても産官学連携は重要な役割を担っている。講演では、理工医歯薬系のみならず人文社会系の視点も含め、これから産学連携を検討している企業や大学と多方面での連携を希望している企業に対して、昨今の産学連携の潮流をはじめ、産官学連携の方法論、京都大学の産官学連携の事例を紹介
また、講師が経験してきた事例より、産学連携は何も技術連携に留まらず様々な機能や効果があることを紹介

【演 題】 京都大学の産官学連携・地元連携の取組紹介 -主に人文社会系分野の知の活用の視点から-
【講 師】 南 了太 氏 (京都大学 産官学連携本部 社会連携部門 主任専門職)

【2】京都文教大学における地域連携・PBL(Project-Based Learning)事業の取り組み

【概 要】 1996年に開学以来、京都文教大学は、京都府南部地域を中心に教育・研究・社会貢献活動に取り組んでおり、2014年度、文部科学省「地(知)の拠点整備事業」(大学COC事業)に京都府内の私立大学として、唯一採択(倍率9.5倍=25校/235校)

地域連携学生プロジェクトや正課授業における地域志向科目のカリキュラム化、地域パートナーとの「ともいき研究」をはじめ、アクティブシニアを養成する「高齢者アカデミー」や「COC+事業」への参画、近隣行政や経済団体との包括連携協定の締結、「京都文教ともいきパートナーズ」など、京都府南部地域を「ともいき(共生)キャンパス」と見立て、大学・学生と地域が「ともに生き活き、いかしあう」取り組みへの展開を紹介

【演 題】 ともいき(共生)キャンパスで育てる地域人材
【講 師】 押領司 哲也 氏 (京都文教大学・短期大学 社会連携部 フィールドリサーチオフィス課長)

【産学連携の取組み事例紹介】

【1】伝統技術の新展開・・・友禅染め技術の機能性印刷技術への展開

【産(企業)】
【概 要】 印刷のオンリーワン技術開発を目指し、友禅染めに使用する「糊(バインダー)」を活用した友禅印刷を開発、キラキラ・ギラギラした煌びやかな意匠性から始まり、消臭や抗菌、香りなどの機能を紙に付加する技術への発展を紹介

【演 題】 紙に機能を付加する印刷 ~友禅印刷~
【講 師】 杉本 豊明 氏 (大平印刷株式会社 常務執行役員)


【学(大学)】

【概 要】 機能性微粒子を設計創製し、その機能の発現についての研究開発を行ってきたが、微粒子の固定化に「印刷」という概念はなかったが、「友禅印刷」は、いわゆる「糊」を用いて微粒子の固定化を印刷で行う技術であり、その双方が出会うことで、「機能性微粒子の印刷」という新たな展開に発展

さらに、友禅印刷の詳細を検討していくうち、単なる印刷に留まらず、機能性微粒子の機能を損なわず、かつ、濃縮して固定化できることが判明し、そこに意匠性を持ち込むことにより様々な用途展開が可能であることを紹介

【演 題】 友禅印刷のスゴイところ
【講 師】 細矢 憲 氏 (京都府立大学大学院 生命環境学研究科 教授)

【2】伝統工芸のリブランディング・・・伝統工芸材料としての竹の機能を活かしたアロマディフューザー「Take Reed」開発

【産(企業)】
【概 要】 京都精華大学の授業の一環として、「竹又 中川竹材店」のもつ古くから伝わる竹工芸の伝統技法を用い、現代の商品ニーズを踏まえたデザイン性のある商品開発に取り組み、竹製リードディフューザー「Take Reed」として商品化の経緯や成功ポイントや苦労、今後の課題などを紹介

特に、竹製リードディフューザー「Take Reed」の開発に取り組んだ学生にとって、展示商談会でのバイヤーとのシビアな商談経験(自分の製作したものが売れる体験)は重要であることに言及

【演 題】 竹製リードディフューザー「Take Reed」の取組みについて
【講 師】 中川 裕章 氏 (竹又 中川竹材店)


【学(大学)】
【概 要】 企業や自治体と連携した「産学連携プロジェクト」を積極的に指導しており、各地で商品開発プロデュースを行う中で形成され500を超える事業者とのネットワークを用い、京都の竹工芸の老舗「竹又 中川竹材店」と京都精華大学デザイン学部プロダクトデザインコースの学生との協業を実現、確かな伝統技術(竹を編む工芸技術)と学生ならではの視点(アイデア)を掛け合わせ、商品の流通からその先まで視野に入れたデザインを具体的な「形(商品という形)」にする、大学の講義をり越えた実践的な取り組みの紹介

【演 題】 伝統工芸×大学×デザインから考えるモノづくり
【講 師】 金谷 勉 氏 (京都精華大学 デザイン学部 プロダクトデザイン学科 講師)
(有限会社セメントプロデュースデザイン 代表取締役社長)


【特別講演】・・・革新的なイノベーション創出に向けて(デザイン思考:Design thinking)

【概 要】 日常生活の中で、よりよく生きるための創造的工夫が行われている一方で、社会そのものが複雑化し、流動化しているため、常に明快に状況を理解し、的確に対処することは容易ではない時代において、「デザイン」という思考方法、創造方法を用いることにより、生活者や様々なステークホルダーとの共創に活かす実践事例を基に、問題状況の創造的な解釈(リフレーミング)と生活にポジティブな変革をもたらすデザイン研究における方法論を紹介

【演 題】 日常からの共創方法としての「デザイン」
【講 師】 櫛 勝彦 氏 (京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系 教授)


【全体質疑応答・討論】

セミナー全体を通しての質疑応答に加え、各講師からイノベーションの創出や地域の活性化に向けた産学連携や地域連携を推進する上でのポイントや意見、アドバイス、産(企業)への希望等について発言